築40年・10年放置の空き家を相続した結果…「処理に400〜500万円」その現実とは
少子高齢化が進み、全国各地で増え続ける空き家問題。今回は、築40年を超え、10年以上放置された古家を相続した事例をもとに、「空き家を放置するとどうなるのか?」を具体的に掘り下げてみます。
放置することで生まれるリスクと、そこから脱するために必要な現実的な対応を、実際の現場の状況とともにご紹介します。
不動産Gメン 滝嶋さんの動画でご紹介されている内容を参考に解説します。
放置の背景:「いつか戻るかも」が落とし穴に
今回の物件は、もともと陶芸用の工房が併設された立派な一軒家。利便性の低さから転居し、「いつかまた戻るかもしれない」という思いから処分せずに残していた結果、10年以上も空き家状態になってしまったケースです。
この“いつか”という感覚が、全国で空き家が増加している原因の一つとも言えます。
荒廃した建物:もはや生活不可能
長年手入れをせず放置されたことで、建物は大きく劣化。
・屋根には穴、外壁は崩れ落ち
・内部は腐食・水漏れ・シロアリ被害
・蔦が建物全体を覆い、まるで自然に飲み込まれた廃墟状態
インフラ(都市ガス・電気など)は残っていたものの、住める状態ではありません。
維持費がじわじわと家計を圧迫
空き家であっても、固定資産税やガス・電気の基本料金は発生し続けます。
年間数万円とはいえ、10年で見れば数十万円。加えて、建物の状態悪化から火災保険も更新不可となり、いざという時の備えも失われました。
大量の生活ゴミ、残置物が負担に
内部には歯ブラシ、食器、アルバム、薬品入りの瓶などがそのまま残されており、残置物処理費用だけで70〜100万円が想定されます。
人手もかかるため、業者に一括処理を依頼するとより高額になる可能性もあります。
売れない理由:解体費>土地の価値
この物件の土地評価は150万円前後ですが、
・解体費用:300〜400万円
・残置物処理:70〜100万円
を合わせると、トータルで400〜500万円の赤字になる見込み。不動産業者も買い手が見つからない状況でした。
相続の手続きも複雑で費用がかさむ
登記名義は亡父のままで、相続登記が未了。2024年4月から相続登記は義務化され、放置すれば罰則の対象にもなります。
戸籍を出生から取得する必要があり、司法書士に依頼すると10万円前後の費用がかかります。
行政支援もあるが条件・限界あり
市町村によっては「空き家対策補助金」(例:最大50万円)を出しているケースもありますが、
・年度ごとに金額が変動
・住民票の移動などが条件
・すべての費用をカバーできるわけではない
といった制約があります。
「0円住宅」にもならないレベルの傷み
建物の状態が良ければ「0円住宅」としての譲渡も可能ですが、今回のケースでは屋根や構造体が著しく劣化しており、それも断念せざるを得ない状況です。
放置のリスクは日増しに高まる
放置し続けると、
・不法占拠者が住み着く
・放火や火災のリスク
・近隣トラブルの原因
といった問題が現実のものになります。
「まだ大丈夫」と思っていても、問題が発生してからでは遅いのです。
結論:早期対応こそが最大のリスクヘッジ
このような物件は、「損を最小限に抑える」ための売却が現実的な選択肢です。
・まずは解体と整地
・行政の補助制度を活用
・売却益ではなく「赤字の回収」を目的にする
という視点が必要です。
いずれにせよ、最初に数百万円の出費がかかるため、「臭いものに蓋」では問題が拡大するだけ。腹をくくって早めに対処することが、将来的な負担を減らす最大のポイントです。
おわりに
空き家問題は、どの家庭にも起こりうる身近な課題です。今回のような事例を通じて、「まだ先でいいや」ではなく、「今動こう」という気づきにしていただければと思います。
もし似たような状況でお困りの方がいれば、ぜひパラソルにご相談ください!