空き家は放置すると負債化する──不動産の“流動性”を失う前に資産として再定義

1. 空き家を「資産」として捉え直す必要性

日本の住宅市場における空き家問題は、もはや個人レベルの悩みを超え、全国的な構造課題になりつつあります。
総務省の住宅・土地統計調査(2018年)によれば、全国の空き家数は849万戸、空き家率は13.6%。2023年には14%を超えたとも言われており、地方ではすでに空き家率が**20~25%**を超える地域も散見されます。

これらの空き家の多くは、固定資産税の軽減措置により「とりあえず残しておく」状態が続いていますが、流通性・市場価値・安全性の観点から見れば、これはきわめて非効率かつ高リスクな状態です。

空き家を「物理的に残す」か「経済的に残す」かは、まったく別の問題です。資産として機能させたいのであれば、**流動性のある“再商品化”**が不可欠です。


2. 空き家の経済的ダウングレードプロセス

空き家が負動産化していくプロセスには、ある種の“規則性”があります。

フェーズ状態問題
初期(0~5年)一部家具付き、居住可能固定資産税・管理コストが発生
中期(5~10年)劣化進行、水回り腐食、雨漏りなど修繕コスト増大、賃貸困難化
末期(10年以上)倒壊・雑草・害獣・近隣苦情行政指導、売却不能、解体費発生

このように、空き家は**「保有しているだけで価値が下がる資産」**であり、対応が遅れれば遅れるほど、出口(売却・貸出・再利用)の選択肢が限定されていきます。


3. 対応策①|資産性を保ったまま売却するには?

■ 早期売却が有利な理由

不動産は時間とともに「陳腐化」します。これは建物そのものだけでなく、取引市場から見た相対的価値も含みます。
築20年の家を買いたい層はいても、築45年で補修必須の物件は「現金一括+フルDIY」など、ごく一部に限られます。

とくに郊外・地方の空き家は、住宅ローン審査が通りづらく、売却可能期間が限られます。流通させられる間に手を打つ必要があります。

■ 現況売却 vs リフォーム再販

  • 「現況売却」は早期処分が目的。買取業者や不動産投資家向け。
  • 「リフォーム再販」はコストをかけて利回りを上げる戦略。ただし投資回収までに時間を要する。

物件の状態・立地・築年数により、どちらを選ぶかは慎重に見極める必要があります。


4. 対応策②|賃貸・利活用で“収益化”する戦略

■ 賃貸可能な状態とは?

最低限の条件として、以下の要素が揃っている必要があります:

  • 風呂・トイレ・キッチン等のインフラが機能している
  • 雨漏りや傾きなど致命的な欠陥がない
  • 火災保険や設備保証などの備えが可能な状態

また、単純な住居以外にもシェアハウス・地域交流拠点・民泊などの多用途化が進んでいます。地方自治体によっては、改修費の補助金制度を活用できるケースもあります。

■ 利回り試算とリスク

例:賃料5万円/月、改修費150万円、管理費込み
→ 回収期間:約2年半(※稼働率90%前提)
ただし空室リスク、突発修繕リスク、周辺環境変化なども加味する必要があります。


5. 対応策③|解体+更地売却という選択

解体は最後の手段ではなく、資産の再構築です。
特に老朽化が進んだ空き家では、「建物付き土地」より「更地」のほうが買い手がつきやすく、売却までのスピードも上がります。

ただし注意点として、**固定資産税の軽減特例(住宅用地の特例)**が失われ、税額が数倍になることがあります。
そのため、解体のタイミングと売却時期は、セットで検討する必要があります。


6. まとめ ― 空き家を“選択可能な状態”で残すことが重要

空き家の扱いには、「いつか使うかも」という心理的な未練がつきものです。
しかし、資産運用の観点では、“選択肢のあるうちに動く”ことこそが最大のリスク管理です。

  • 売却するか
  • 賃貸で回すか
  • 更地にして再活用するか

空き家の扱いは、資産価値の維持とリスク回避のバランスゲームです。
パラソルは、物件の現況調査から、地域ニーズを踏まえた活用提案、さらには実際の運用・売却支援まで、一貫して対応可能です。

「負動産」となる前に、資産性を見直す。
その一歩が、後悔しない選択につながります。