危険空き家の行政代執行が開始──所有者が対応できない現実と、私たちがすべき選択とは?

2025年7月25日、長崎市が老朽化し倒壊の危険がある空き家に対し、「行政代執行」を実施しました。今回の事例は、空き家問題がいよいよ“待ったなし”のフェーズに入ってきたことを象徴しています。

本記事では、実際に何が起きたのか、行政の対応とその背景、そして空き家所有者が取るべき現実的な対策について解説します。


1. 行政代執行とは?

行政代執行とは、所有者が危険な空き家などの是正命令に従わなかった場合、自治体が代わりに撤去や修繕を行い、その費用を所有者に請求する制度です。これは、空き家対策特別措置法に基づいて行われます。

今回、対象となったのは長崎市女の都2丁目にある築45年・木造平屋(元は2階建て)。2020年の台風被害で損壊し、2階部分はすでに所有者によって撤去済みでした。しかし、その後も劣化は進み、最終的には行政が解体に踏み切ることとなりました。


2. 所有者が「対応できない」という現実

報道によれば、所有者は「経済的理由」で改善命令に対応できなかったとされています。これは、多くの空き家所有者が直面するリアルな課題でもあります。

たとえば…

  • 老朽化が激しく、解体費用が200~400万円程度かかる
  • 売却しようにも買い手がつかない
  • 自分では使う予定がなく、管理や税金だけが発生し続ける

こうした状況に直面したとき、なかなか自力での対処は難しく、「何もできずに放置」という状態に陥ってしまうケースが多いのです。


3. 解体費用は誰が払うのか?

今回の代執行にかかった費用は約300万円。長崎市はこの費用を所有者に請求すると発表していますが、実際には回収できないケースも少なくありません。

つまり、最終的に行政コストとして税金で負担されることもあるということです。これは自治体にとっても大きなリスクであり、今後さらに「空き家の強制処分」が加速していく可能性を示唆しています。


4. 私たちが今できる「現実的な対策」とは

◎ 空き家を持っている人へ

  • 使う予定がないなら、早めに売却や譲渡を検討
  • 解体補助金の活用や、行政への相談を早めに行う
  • 現地管理や近隣対応も放置しない

◎ 空き家を相続しそうな人へ

  • 相続放棄も視野に入れる
  • 放置しておくと固定資産税の優遇がなくなり、維持コストが急増するリスクがある

◎ 地域で空き家を見つけた人へ

  • 市町村の空き家相談窓口に情報提供することで、対応のきっかけになる可能性もあります

5. まとめ──空き家は「他人事」ではなくなる時代へ

今回の長崎市による行政代執行は、所有者が悪意を持って放置していたというより、「経済的にどうしようもなかった」ことが背景にあるという点で、非常に象徴的です。

空き家問題は、単なる不動産管理の話ではありません。災害リスク、景観の悪化、治安や地域価値の低下といった、私たちの暮らし全体に関わる“社会課題”です。

だからこそ、個人も行政も早めに動くことが必要です。
「いつか考えよう」ではなく、「今、動こう」。
それが、空き家問題を“自分ごと”としてとらえる第一歩になるのではないでしょうか。