空き家の行政代執行で解体されたら…その費用、支払いを拒否できるのか?


「知らないうちに空き家が取り壊され、あとから高額な請求書が届いた」
そんな話を耳にしたことはないでしょうか?

空き家問題が深刻化するなかで、行政が持ち主に代わって強制的に解体する「行政代執行」が増えています。
では、その費用は拒否できるのか?あるいは回避する方法はあるのか?

今回は、空き家の持ち主として知っておくべき行政代執行の費用負担の実態と、例外的に争えるケース、そして支払いを抑えるための実務的なポイントについて、フラットな視点で解説します。

危険空き家の行政代執行が開始──所有者が対応できない現実と、私たちがすべき選択とは?

2025年7月25日、長崎市が老朽化し倒壊の危険がある空き家に対し、「行政代執行」を実施しました。今回の事例は、空き家問題がいよいよ“待ったなし”のフェーズに入ってきた…


行政代執行とは? - 所有者が動かない場合の「最終手段」

行政代執行とは、建築基準法などに基づいて行政が空き家の所有者に「改善命令」や「解体命令」を出したにも関わらず、それに従わなかった場合に、行政が代わりに取り壊しを行う措置のことです。

この制度は「行政代執行法」に基づいており、
公共の安全や衛生に重大な支障をきたす空き家が対象となります。


取壊し費用は誰が払う? - 法的には「持ち主負担」が原則

行政代執行法 第6条により、代執行にかかった費用は空き家の所有者に請求されることになります。
しかも、その請求は「国税と同様の方法」で回収されるため、

  • 無視しても延滞金が加算
  • 最終的には財産の差押えもあり得る

という、非常に強い徴収権限が行政側に与えられています。

つまり、
「費用を払いたくない」「勝手に壊された」
と感じていても、原則として支払い拒否はできないのが実態です。


支払いを拒否できる可能性は? - 争える“例外”ケースとは

ただし、すべてのケースが一律に支払い義務を負うわけではありません。
以下のような場合には、「手続きの瑕疵(ミス)」や「生活状況」により、支払いの回避・猶予ができる可能性があります。

1. 行政側の手続きに不備があった場合

  • 命令通知が不十分だった
  • 所有者を正確に特定せずに執行された
  • 解体の緊急性・必要性が乏しかった

こうした場合には、行政不服申立て行政訴訟によって争うことができます。
ただし、手続きは専門的で、費用や時間もかかるため、現実的にはハードルが高めです。

2. 経済的に困窮している場合

自治体によっては、以下のような対応が可能なこともあります。

  • 分割払いの相談
  • 納付猶予の申請
  • 生活保護受給世帯への減免措置

「支払いたくても払えない」状況にある方は、早めに自治体へ相談することが重要です。


実務上のポイント - トラブルを避けるためにやっておくべきこと

ここまでの内容を踏まえ、空き家の所有者として今すぐできる対応をまとめておきます。

やるべきこと内容
1. 所有空き家の現状把握放置していないか?近隣に迷惑をかけていないかをチェック
2. 自治体の指導通知に注意命令書や警告書が届いていないか確認。無視しないこと
3. 解体命令に異議がある場合内容証明などで行政側に正式な異議を伝える
4. 経済的に厳しい場合自治体の税務課や福祉課に早めに相談する

まとめ - 空き家問題は「無関心」が一番のリスク

空き家が行政代執行で取り壊された場合、その費用は原則として所有者が全額負担する義務があります
支払い拒否は法律的に難しく、放置すれば差押えという強制手段も待っています。

しかし、手続き上のミスや経済的困窮など、例外的に争えるケースや、支払いの猶予・分割といった選択肢もゼロではありません。

最も重要なのは、「関わりたくない」と無関心になることを避けること。
空き家問題は、知って動けば負担を減らせる分野です。
後手に回らず、早めの対応を心がけましょう。


ご希望があれば、この内容をもとに空き家所有者向けのリーフレット自治体相談ガイドなども作成できます。
お気軽にお申し付けください。