ペアローンや50年ローンは誰のための制度なのか
──下落局面に入る地方都市でこそ「中古住宅」が最適解になる
近年、新築住宅の取得を後押しするように、ペアローンや超長期ローン(40年〜50年)が急速に普及しています。「家が欲しい人を助ける制度」のように見えますが、その実態は必ずしも利用者に寄り添った設計とは言えません。
1. ペアローンは“世帯としての最大借入額”を優先する仕組み
ペアローンは、共働き世帯の収入を合算することで借入額を増やせる制度です。
しかし、表向きのメリットとは裏腹に、利用者側のリスクは極めて大きい。
● 離婚時のリスクが極端に高い
夫婦それぞれに住宅ローンが設定されるため、離婚したからといって「片方のローンが消える」わけではありません。
・売却してもローンが残るケース
・どちらも住まない家のために返済だけが続くケース
これらは実務上頻繁に起こります。
● 収入が減ったときに破綻しやすい
2人で組んだローンは、2人が働き続けることを前提に設計されています。
病気・出産・転職など、どちらかの収入が落ちた瞬間に返済負担が跳ね上がり、“住宅ローンが家計を支配する”状況になりがちです。
2. 50年ローンは「将来価値を考慮しない」前提のローン
50年後の不動産価値が今より上がっている地域は、全国でもごく一部、ほぼ大都市圏に限られます。
地方都市の多くは人口減少・住宅供給過多が続いており、50年後に資産価値が残る可能性は極めて低い。
つまり、
“価値が下がる可能性の高い資産に、人生の半分以上を担保に入れる”
という構造になってしまっています。
● ローンだけが長期で、家の価値は短期で落ちていく
築30年を過ぎれば、多くの住宅の市場価値は大きく下がる。
50年ローンの残債と売却価格が合わなくなる(オーバーローン)ケースも増えます。
3. 地方都市の現実:住宅価格は“上がらない”ではなく“下がる”可能性が高い
地方都市では、新築を建てても価格が上昇して資産になるケースは極めて稀です。
理由は明確です。
- 人口減
- 需要の減少
- 供給過多
- 土地の流動性が低い
- 新築の大量供給
この環境で50年ローンを組むのは、将来への柔軟性を大きく奪う選択になります。
4. では、地方で家を購入する最適解は何か?
答えは“中古住宅を上手に使う”ライフデザイン
特に地方の子育て世帯にとって、最適解は中古住宅を10〜15年だけ使う購入戦略です。
● 子どもが育つ期間にしっかりした広さを確保できる
新築より安価に広い家を確保でき、生活の質を確保しやすい。
● 下落幅が小さいため“売却しても大きく損しにくい”
中古はすでに価格が落ちきっており、買値と売値の差が小さく済む。
= 住宅に“人生を縛られにくい”。
● 子どもが巣立ったあとに最適な住まいへ再移動できる
- 平屋へ移る
- 生活動線が簡単な場所に引っ越す
- 家庭の状況に合わせて賃貸へ切り替える
人生のステージごとに住まいを最適化できるのは、中古住宅だからこそ。
5. 新築より、中古住宅のほうが「出口戦略」を確保しやすい
住宅購入で最も重要なのは**入り口(購入)ではなく出口(売却・住み替え)**です。
中古住宅の利点はここにあります。
- ローン残債と売却価格の乖離が小さい
- 市場に流通しやすい
- リノベで価値を再設計できる
- 固定資産税が新築より安く済むことが多い
特に地方では、50年住む前提で新築を建てるより、
10〜15年で柔軟に動ける中古住宅のほうが、住居費の総額も生活の自由度も高くなります。
結論
“長く住み続けるための住宅”ではなく、人生に合わせて住み替えられる住宅”を持つ時代へ“
ペアローンや50年ローンは、一見すると家を買いやすくする制度のように見えます。しかし、地方都市の将来を踏まえると、利用者のメリットよりも、住宅市場を維持するための制度と感じる場面が多いのも事実です。
パラソルが提案するのは、
「中古住宅を上手に乗り換えながら、人生のステージごとに最適な住まいを選ぶ」
という新しい住宅観です。
これは、
- 子育て期
- 子どもの独立
- 夫婦の第二の生活
それぞれを豊かに過ごすための最も合理的で、最も柔軟な住まいの選択肢です。
地方でこそ、中古住宅は“最適解”になります。
